ネット通販、定期購入巡る苦情とセット  (2021.7.8)


健康被害の訴え減らず 第2の「ケトジェンヌ」懸念
 インターネット通販において健康食品や化粧品などの定期購入契約を巡る苦情・相談が増え続けている問題で、商品を使用したことによる体調不良を訴える声も同時に増加していることが、国民生活センターへの取材で分かった。「1回だけ注文したつもりが定期購入だった」「定期購入の解約ができない」などといった定期購入を巡る苦情・相談全体のおよそ1割が、肌の状態を含む健康被害の申し出と一体化している状況が続いている。

 国民生活センターの調べによると、主にインターネット通販における健康食品、化粧品のほか飲料の定期購入に関する消費者からの相談件数は、2020年度に約5万5000件を超えた。前年度から約5000件増加する形で2年連続の5万件台を記録した形。

 そのうち、商品を使用したことに伴う体調不良などの健康被害を同時に申し出た件数は、2年連続4000件台で推移した。2019年度が約4400件、20年度が約4200件。定期購入に関する相談件数が2万件台前半であった18年度は約2000件で、定期購入に関する相談件数の増加に比例するように健康被害の申し出が増えている。

 こうした状態を放置すると、第2の『ケトジェンヌ』を生み出すおそれがある。
 消費者庁は2019年9月、主に下痢の体調不良を訴える危害情報が、サプリメントのケトジェンヌを摂取した人に急増しているなどとして、消費者安全法に基づき消費者への注意喚起を実施。同時に商品名や販売会社名を公表した。

 この販売会社を巡っては、消費者庁が注意喚起を行う以前から各地の消費生活センターに、定期購入に関する苦情・相談が多数寄せられていたとされ、販売方法に対する苦情・相談と体調不良の申し出が、一定の割合で一体化していたとみられる。

 ケトジェンヌの摂取で下痢の健康被害情報が短期間のうちに急増した理由については、厚生労働省や専門家が緻密な分析を行ったものの、最終的にはっきりしなかった。

 国民生活センターによると、定期購入に関する相談件数が最も多いのは健康食品で、次いで化粧品。ただ、2021年度に入ってからは、健康食品に関する相談件数を化粧品が上回る傾向が見られているという。

 一方、JARO(日本広告審査機構)に寄せられる定期購入に関する苦情も増え続けている。2020年度は297件で前年度比は126.9%と3割近く増えた。定期購入を巡る苦情が多いのは健康食品、化粧品、医薬部外品といった美容・健康関連の商品。苦情件数の伸び率としては医薬部外品が顕著で前年度比2倍超に達した。また、同年度は「CBD関連製品」の定期購入に関する苦情も寄せられたという。

 JAROが6月18日に公表した「2020年度の審査概況」。この中でJAROは「『定期購入』に関する苦情は引き続き増加」していると指摘。健康食品に関しては前年度の143件から135件に減少したものの、化粧品は54件から63件に、医薬部外品は20件から53件にそれぞれ増加したとしている。

 医薬部外品の定期購入に関する苦情が前年比で2倍以上に増えている点が見逃せない。同概況によると、医薬部外品については定期購入に関するもの以外でも苦情件数が増えており、20年度は456件と前年度比でおよそ3倍と大幅に増加したという。

 また、20年度は、前の年度まで無かった「CBD関連製品」の定期購入に関する相談が26件寄せられたとしている。引き続き21年度も軒数が増えるのか。動向が注目されそうだ。

 JAROに20年度寄せられた定期購入に関する苦情297件のうち、取引の有無について見ると、「購入した」が218件に上ったという。このためJAROでは「苦情申し立て者は既に購入済みであることが多いことも特徴である」と指摘している。

JAROへの苦情 1万件超 20年度 健康食品、980件で2位
 JAROがまとめた「2020年度の審査概況」によると、2020年4月~21年3月にJAROが受け付けた広告に対する「苦情」は1万1560件に上り、初めて1万件を超えた。

 前年度比は124%と2割以上の増加。同時にJARO会員企業からの「照会」も増え、前年度比121.5%の2519件に達した。

 苦情が多かった商品・サービスは、デジタルコンテンツが1270件で最多。次いで健康食品987件、化粧品805件、携帯電話サービス620件、医薬部外品456件と続いた。

 いずれも前年度から件数が大きく増え、健康食品は前年度比128.2%、化粧品は同248.5%、医薬部外品は同298%。増加要因としては、「コロナ禍で消費者のメディア接触時間や在宅時間増加などの影響」もありそうだという。

 また、苦情を媒体別に見ると、2019年度に初めてトップになった「インターネット」が5531件で最多だった。前年度比は136.6%とさらに増加。医薬品的な効果や誤認をまねく定期購入契約など不適切な広告・表示に対する苦情が増加したという。

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