厚労省 食薬区分改正案示す 専ら非医に新規3成分(2021.9.9)


 「食薬区分」の一部改正を巡る意見募集(パブリックコメント)が先月26日から行われている。主な改正内容は、専ら非医薬品(専ら非医)リストに、▽ソリザヤノキの樹皮▽テンニンカの果実③エルゴチオネイン──の3つを新規で追加することなど。また、専ら医薬品(専ら医薬)リストに収載されているグルタチオンを巡り、還元型グルタチオンを他名等に追記し、同様に専ら医薬として取扱う方針が示された。意見募集の期限は今月24日まで。

マオウ巡り新たな見解
 食薬区分を所管する厚生労働省の監視指導・麻薬対策課(監麻課)は8月26日、「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」の一部改正案を公表。同時に意見募集を開始した。

 新たに専ら非医として取扱う考えが示されたソリザヤノキは、オオナタノミノキやモクコチョウを他名とするノウゼンカズラ科植物の一種。海外では以前から、認知機能領域向けなどのサプリメント原材料として、ソリザヤノキ抽出物を提案する動きがある。

 また、同じく専ら非医とする考えが示されたテンニンカはフトモモ科植物の一種。国内では以前から、テンニンカ果実の抽出物がスキンケア化粧品向け原材料として販売されている。同抽出物をサプリメント・健康食品向けにも展開する目的で食薬区分が照会されたとみられる。

 一方、機能性表示食品の機能性関与成分として届出実績が既にあるエルゴチオネインについては、化学物質等の枠組みで専ら非医とする考えが示された。同成分は食用キノコを始めとする食品に含まれている。エルゴチオネインの食薬区分を審議した有識者らは、「多くの食品に含有されており、安全性にも問題があるとは考えられない」と判断した。

 有識者らは、ソリザヤノキの樹皮、テンニンカの果実についても、医薬品としての使用実態がないことも踏まえ、安全性に「問題があるとは考えられない」との見解をまとめた。

 今回の改正案では他に、もともと「根」が専ら非医とされているサラシア・オブロンガについて、「茎」を追加する考えを示した。

 また、陽イオン交換法などを用いて植物塩基を除去したマオウ(麻黄)の地上茎のエキスを、専ら非医として取扱う方針を示した。

 もともとマオウの地上茎は専ら医薬。その枠組みは変えず、興奮作用などがあるエフェドリンアルカロイドを除去したエキスについては、専ら非医とする考えが示されたことになる。エフェドリンは専ら医薬成分。

 エフェドリンアルカロイド除去マオウエキスを巡っては、ここにきて新型コロナウイルス感染症患者に対する「新規生薬エキス製剤」として有効性を検証する動きが国内で立ち上がっている。北里大学を始め国立医薬品食品衛生研究所、ツムラが共同研究を進めている。

 この研究との関連は不明だが、エフェドリンアルカロイド除去マオウエキスの食薬区分を照会する企業等が存在したことになる。有識者らは、同エキスを専ら非医とする理由について、「国内外で医薬品としての使用実態はなく、安全性にも問題があるとは考えられない」と見解を取りまとめた。照会者は専ら非医となることをを求めていたのか、それとも逆か。意図が注目される。

還元型を「専ら医」に
 この他、専ら医薬であるグルタチオンについて、「還元型グルタチオン」を他名等の項目に追記する考えが示された。グルタチオンは還元型と酸化型の2種類に大別され、少なくとも前者は、専ら医薬であることが明確にされることになる。

 市場関係者によると、グルタチオンとは一般的に還元型を指す。厚労省関係者によれば、還元型の食薬区分の取扱いについて複数の問い合わせがあったという。

 グルタチオンを巡っては昨年6月にも食薬区分が審議されていた。専ら医薬から専ら非医への区分変更を審議。その結果、「日本において医療用医薬品成分として使用されており、今回新たな知見が生じたわけではない」として区分変更は不要であるとする判断が示され、サプリメント業界関係者の嘆息を誘っていた。

 有識者らは還元型グルタチオンについて「日本薬局方収載のグルタチオンと同一のものであり、国内で医療用医薬品としての使用実態がある」と指摘。そのため、専ら医薬とすることが「妥当」だとする見解をまとめた。

合成物巡り「区分判断しない」 有識者ら指摘「使用実態がない」
 厚労省監麻課が今回取りまとめた食薬区分の一部改正案は、薬学などの有識者で構成される通称「食薬区分ワーキンググループ」(WG)が今年3月5日と6月22日、事業者などから照会された新規成分本質の食薬区分を審議した結果を反映したものだ。厚労省は意見募集を開始するのに合わせ、両日の議事概要を公開した。

 議事概要によれば、両日の審議で合計9新規成分本質の食薬区分を議論。ソリザヤノキの樹皮やテンニンカの果実など、改正案で専ら非医とする考えが示された成分本質については、国内あるいは国内外で医薬品としての使用実態の「ない」ことが、専ら非医とする判断の強い根拠になったことが議事概要からは窺われる。

 一方で、食薬区分の「判断を行わないことが妥当」と判断された物質もあった。議事概要によれば、その理由は「合成化学物質であり、国内外で医薬品や食品としての使用実態がない」とされている。

 食品として、あるいは医薬品として使用実態のない合成化学物質に関しては、食薬区分を判断しない方針を明確に示したかっこうだ。厚労省監麻課は取材に対し、「とくに新しい考え方を示しているわけではない」と答えた。

 食薬区分の判断を「行わない」とされた合成化学物質は、キノリンの一種。正式には「10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dione」

 なお、厚労省監麻課は2020年度、食薬区分WGを計5回も開いた。これまでのWG開催数は年間で1回程度だったが、19年度から回数を大幅に増やしている。増加する食薬区分の照会件数に対応する目的がある。



Clip to Evernote

ページトップ