花王 独自素材の外販 疑問に答える (2021.9.23)
対消費者&事業者 両輪で健康に貢献 花王 河南洋史 ケミカル事業部門 油脂事業部長
花王(東京都中央区)の主力ヘルスケア食品ブランド『ヘルシア』に含まれる主要原材料は同社独自に開発したポリフェノールである。同社は先月2日、外部企業に対してその原材料販売(外販)を開始すると発表。さらに、機能性表示食品の届出サポートや製品開発サポートも併せて手掛けていくことを明らかにし、「花王がなぜ」と業界を大いに驚かせた。科学的根拠を丹念に積み上げ、機能性表示食品から特定保健用食品まで展開でき、かつ、海外マーケットでも十分通用するエビデンスベースの有力機能性素材を外部企業に提供していく方向に舵を切ったのはなぜか。ポリフェノール素材販売事業の窓口となる同社ケミカル事業部門の河南洋史・油脂事業部長に話を聞いた。
──「ヘルシア」シリーズに配合している茶カテキンとコーヒー豆由来クロロゲン酸類の原材料販売を開始しました。理由を聞かせて下さい。
「当社の独自素材である茶カテキンとコーヒー豆由来クロロゲン酸類の2つの素材を販売しようとする計画は、2018年ごろから始まりました。これは他社の方々と協業することで、当社の独自素材を社会に幅広く認知していただき、柔軟な発想で素材を有効的に活用できるのではないかという考えから始まったプロジェクト。安定供給体制が整ったこともあり、今回広くパートナーを募集する運びとなったのです」
――とはいえ、外販を行うことで「ヘルシア」の競合商品を増やすことになるのでは?
「外販を行うことで、競合会社が増えるという考えは持っておりません。当社の第一目的は『花王の独自素材であるポリフェノールを広め、広く社会の健康に貢献すること』にあります。ただ、当社の力だけでそれをするのは限界がある。当社が思ってもいなかった柔軟な発想、当社がいまだ持っていない技術などで、当社のポリフェノールを活かしていただきたいのです」
――つまり従来のBtoC(対消費者)にBtoB(対事業者)を加えた両輪展開で花王のポリフェノールを人々の健康維持増進に役立てるとともに事業としても大きくしていきたいということですか。
「その通りです。当社の素材を他社に提供することで、健康増進の輪が広がる。もちろん、当社のポリフェノールの認知度も広がることでヘルシアの認知度も高まってほしいという願望もあります」
パートナーの選定ケースバイケース
――パートナー選びには条件が存在しますか。
「あえて条件は設けておりませんが、当社のヘルシアと競合する分野は難しいでしょう。逆に当社が思いもつかないような素材利用の形態ならば大歓迎です。規模にかかわらず発想がユニークな会社、特徴のある技術力を持つ会社、そして何より元気な会社にパートナーになっていただきたいと考えています。右に挙げたのは一例で、基本的にはケース・バイ・ケース。例外を除いて当社の方から扉を閉ざすことはまずありません」
――さっそく茶カテキンがダイドードリンコに採用されました。エナジードリンクの機能性表示食品『ザ・バーニング』の販売が先月から始まっています。
「ダイドードリンコさんは、健康に関するビジョンや理念が当社と共感できる部分が大きく、ご縁ができました。ダイドーさんは飲料を専門に開発・販売されており、我々にはない知見も豊富に揃えておられます。当社もよいパートナーができたと喜んでいます。数年前まで、エナジードリンク市場が、現在のように急激に伸びるとは思ってもいませんでした。その意味で『ザ・バーニング』は、ダイドーさんの企画力・技術力が生み出した賜物です。当社としても、是非成功してほしいと思っています。そのためには、サポートを惜しむつもりはありません」
他素材の外販、検討はしている
――原材料販売だけでなく、機能性表示食品の届出サポートや製品開発サポートまで行う理由は?
「当社が持つポリフェノールの機能性などに関するエビデンスは、当社の『資産』だと思っています。当社の素材を使っていただけるパートナー企業の皆様にもこの資産の価値をご理解いただき、有効的に活用していただくためのサポートです。とはいえ、素材の扱いについては、十分なご理解をいただく必要があります。一例を挙げれば、当社の茶カテキンは、1日540㍉㌘の継続摂取で内臓脂肪低減効果が確認されています。それ以下の量で、『ヘルシア素材を使用』として宣伝することは、ご遠慮いただきたいのです。たとえば、当社の茶カテキンを30㍉㌘だけ使うという利用法をご提示いただいても、当社としては認められるものではございません。当社の資産やヘルシアのブランドを守る必要があります」
――現在は国内販売のみの展開。今後、原材料販売の海外展開について教えてください。
「よいパートナーが見つかれば、前向きに考えたいと思います。とはいえ、まずは国内。ダイドードリンコさんのような良いパートナーを、まずは5社ほど作っていきたいと考えています」
──花王の独自素材はポリフェノールだけではありません。今後、その他素材についても外販を行っていく予定は?
「検討はしている、という回答にとどめさせて下さい」
【写真=左:花王 河南洋史 ケミカル事業部門油脂事業部長 右:採用第1弾となったダイドードリンコの機能性表示食品。「ヘルシア」のブランドマークも】