受託製造企業大手の最新事業戦略(2021.9.23)

三生医薬_R&amp

アピ、「機能性」サポ強化 顧客ニーズ、個別に対応 オーダーメイド型へ進化
 サプリメント・健康食品受託製造大手のアピ(岐阜県岐阜市)が今期(2022年8月期)、受注が増加している機能性表示食品の開発・製造を巡る顧客満足度の向上と、プラントベース食品向け原材料の拡販に向けた取り組みをそれぞれ強化する。機能性表示食品については、以前から進めている届出支援サービス『API's SR』を強化。顧客それぞれのニーズに則した新規ヘルスクレームの開発などに力を入れる。

プラントベース食品、原材料販売も強化
 前期業績で健康食品事業の売上高は前期比1.9%増で着地(速報値)。受託事業の概況を一般健康食品と機能性表示食品に分けると、ボリュームが大きいのは圧倒的に前者だが、後者に対するニーズが大きく高まっている。ニーズに応えることで一層の業績拡大を図れると判断した。

 今期は、機能性表示食品を巡る〝ワン・ストップOEM/ODM〟体制の確立をめざす。そのために、機能性表示食品の届出に必要な研究レビュー(SR)を同社独自に実施し、処方設計、製剤化から届出支援までを一気通貫に行うサービス『API's SR』を大きく進化させる。

 これまでは、同社の研究開発部で実施したSRを起点に製品化から届出支援までを行ってきたが、顧客それぞれのニーズに合わせたオーダーメイド型サービスの色合いを強めていく。例えば、既存のヘルスクレームでは満足しない顧客に対し、ニーズを聞き取りながら、その顧客独自の新規ヘルスクレームや複合的ヘルスクレームなどを行える機能性表示食品の届出支援に取り組む。

 そのために、顧客が想定する商品コンセプトに最適化したエビデンスベースの処方提案サービス『API's CF』(コンセプトフォーミュレーション)と、『API's SR』の両サービスを掛け合わせる。これにより、顧客それぞれのニーズに合わせた機能性表示食品の届出支援をフレキシブルに行えるようにする。

 こうした取り組みを、営業部門と研究開発部門が密に連携しながら推進する。同社は前期スタートと同時に組織再編を行い、営業本部と研究開発本部を統合。営業部門が吸い上げた顧客ニーズを研究開発部門に直接落とし込めるようにした。さらに、前々期には、機能性表示食品を専門的に手掛ける研究開発部隊を発足させている。

 新たに構築した組織体制と、強みとするマンパワーを背景に、顧客ニーズに則した機能性表示食品の開発から製造までを一手に引き受け、今期の健康食品事業の業績を引き上げたい考えだ。

 また、健康志向の強いプラントベース食品向け原材料の拡販を通じても同事業の業容拡大を図る。プラントベース食品に対する注目度の高まりも追い風に、昨年から本格運用を始めている独自の加水分解装置・技術を活用した新素材を発売する他、昨年発売したオーツ麦のパウダーおよび糖化液の採用拡大をめざす。オーツ麦素材も同技術・装置を活用したもの。

 プラントベース食品など一般加工食品向け原材料販売事業を「今後の柱の一つに育てていきたい」と同社は話す。それを実現するための施策の一つとして、同社の研究開発拠点であるNRC(長良川リサーチセンター)内でアプリケーションの検討を行えるようにした。各素材を実際に活用したレシピ開発を進めている。

21年8月期業績、売上高367億円
 アピは今月6日までに前期(2021年8月期)業績の速報値を公表した。売上高は367億7100万円で、前年同期比は1%増。経常利益も増加の見込み。健康食品事業については同1.9%増の261億4400万円と増加した。

 今期は、売上高391億4000万円(前年同期比6.4%増)をめざす。また、設備投資に約22億円を投じる計画を示している。

三生医薬 来秋にも新R&D拠点 南陵工場に隣接 新製剤技術の実用化図る
 サプリメント・健康食品受託製造大手の三生医薬(静岡県富士市)が総額約25億円を投資して研究・開発(R&D)拠点を新たに造る。9月10日に着工、来年9月の竣工を予定している。同社のR&D部門を新施設に集約させ、製剤技術などの研究・開発から受注品目の量産化に向けた試作まで総合的に研究・開発を行えるようにする。同社で新たに開発した製剤技術の実用化に向けた製造拠点としても活用していく。

 三生医薬は9月10日、同社の主力工場で、ソフトカプセル専用工場の南陵工場(同富士宮市)の敷地内に新たなR&D拠点「イノベーションセンター」の建設を開始したと発表した。現在は大岩事務所(同市)に属す、知財や品質保証を含めたR&D部門を新拠点に移管し、製造(製剤化)とR&Dを一体化させる。これにより、顧客の新製品開発や製品試作などをスピーディに行えるようにする。

 新たに建設するイノベーションセンターは、鉄筋2階立てで建物面積は約1100平方㍍。オープンイノベーションの考え方を取り入れた設計にする。

 2階のワンフロアに研究ラボとオフィスを置く。ICT環境を整備し、国内外の顧客や外部の研究開発パートナーなどの他、東京に昨年新設した顧客も利用できる製品試作ラボ「ADC」とオンライン上でつながり、密なコミュニケーションを取れるようにする。

 1階には、同社で新たに開発した製剤技術『ユニオーブ』の小規模生産設備を設置し、同技術の実用化に向けた取り組みを本格化させる。まずは医薬品用途での実用化を目指す方針で、医薬品GMPの要件に適合した開発・製造環境を整える。

 ユニオーブについて同社では、「今後、ソフトカプセルを中心にした製剤技術開発に長年取り組んできた当社を象徴することになる技術」(同社幹部)と語る。

 特に医薬品の分野では、成分の有効性を明らかにできても、安定性が悪い、吸収性に問題がある、などといった物性上の理由で製剤化が断念される場合がある。こうした課題を解消する目的で開発した製剤技術がユニオーブで、結晶を非結晶にする「アモルファス化」を背景技術にしたもの。安定性などに課題のある成分でも製剤化できるという。

 まずは医薬品用途での実用化を目指すが、サプリメントにも応用できる。高付加価値製品の開発にユニオーブを活用いただくことを想定している」と同社幹部は話している。

【写真=総額約25億円を投じる新たなR&D拠点「イノベーションセンター」の完成イメージ(画像提供:三生医薬)】



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