20年度 食品通販市場 4兆円に 矢野経調べ (2021.10.7)
新型コロナ背景に2ケタ増
新型コロナ禍で需要が高まった「食品通販」の2020年度市場規模が前年度比約13%増の4兆3057億円(小売金額ベース)に達したという。調査会社の矢野経済研究所が今年6~9月にかけて調査し、結果の概要を9月22日に公表した。通販で消費者に提供される生鮮食品からその他加工食品までを調査対象にしたもので、健康食品も含む。
矢野経済研究所の調べで食品通販市場が4兆円台に達するのは初めて。20年度は、新型コロナ禍で生じた外出の自粛(ステイホーム)、内食化(おうちごはん)、巣ごもり需要の拡大を受け、食品通販市場全体に強い追い風が吹き、特需が発生した。
特に、1回目の緊急事態宣言が発令された昨年4~6月は、食品の巣ごもり需要、まとめ買いが急増。長期保存できる米▽飲料▽乾麺▽レトルト食品▽インスタント食品▽シリアル──などが売上を大きく伸ばした。
ちょうどその時期、健康食品業界からは、「青汁が伸びている」という声が聞かれた。手軽に栄養を補給できる長期保存食としてニーズが高まったとみられる。
矢野経済研究所の調べによれば、自粛期間の長期化も食品通販市場に追い風となった。「在宅時間を充実化させたいというニーズが高まり、普段より美味しい・高品質な食品のお取り寄せ需要が高まる結果となり、そのトレンドは21年度も続いている」。また、ここ数年では「比類ない数」の新規参入が見られたことも、新型コロナ下における食品EC市場のトピックだという。
それまで外食産業向けに提供されていた生鮮食品が流通先をなくしたことで、「食品ロス」の削減も訴求しながらECで家庭向けに販売する動きが加速した。酒類にも同様の動きが見られた。ただ、新規参入の増加が市場は活性化した一方で、「競争も激しくなっている」と、矢野経済研究所は指摘している。
同社は21年度の食品通販市場規模について、前年度比3.5%増の4兆4576億円になると予測。伸びの鈍化を見通した格好だが、21年度も「全体的に外出を控え、在宅率が高い状態」が続いていることから、「需要は高止まりの状態」にあるという。
しかし22年度は、「21年度は持ち越された特需の反動減」が起こるとの見通しを示している。とはいえ、同社は22年度市場規模を約440億円と予測しており、反動減が起こるとはいえ20年度を上回ると見る。