【素材探訪】骨と関節 両方に良いとどう?(2014.5.8)


 健康維持・増進に必要不可欠の一方で何故だか市場が広がらない機能性。その筆頭といえば骨の健康だろう。骨に対する機能を用途とする特定保健用食品の市場規模推移を見ても、2009年度の192億6000万円をピークに減少傾向。直近調査の13年度は160億円台をキープするのがやっとだった。

 広がらない背景には「乳製品を中心とする一般食品が幅を利かせている。カルシウムの消費者認知度が大きすぎる」(原料事業者)ことがある。また、「(骨に対する)体感性がない」(別の原料事業者)という機能特性上どうにも克服し難い課題も指摘される。

 そんな中で骨強化の機能性食品素材を普及させるためにどうするか。その一つの答えとして、訴求機能を抜本的に変えるという判断が下された素材がある。韓国のバイオベンチャーが開発・製造する発酵黒酵母抽出物「ポリカン」。総輸入販売元である蝶理、日本代理店のヘルシーナビが選択したのは、関節痛改善素材として売り込むことだった。

 なにも無理矢理こじつけたわけではない。元々この素材は骨粗しょう症予防作用が示唆されると同時に、関節炎症状を緩和させる可能性のあることが認められていた。その機能の仕組みも一部解明されている。有効成分のベータ・グルカンがパイエル板を刺激し免疫調整を活性化させ炎症を抑制することで、関節炎を改善させる可能性があるというもの。ヒトでの知見こそまだ得られていないものの、変形性関節炎やリウマチ性関節炎に対する有効性について論文発表もなされている。

 関節機能に着目した新たな拡販策を巡って蝶理では当初、「全面的に関節で打ち出す。骨ではPRしない」と話していた。一方、それはそれで今度は他の有力抗炎症素材との市場競争に晒されるわけで、認知度などの面から正直、分が悪い感があった。実際、同社からはその後、「関節だけでも弱い」という市場の反応が聞かれていた。

 そこで、骨強化素材としての「ポリカン」を改めてみてみたい。

 骨粗しょう症予防作用が期待できる機能性食品素材にはビタミンK2メナキノン7、ビタミンD3、ベータ・クリプトキサンチン、プロテタイトなど良いものが多い中で、ヒトでの有効性データ取得が待たれるものの、同素材はそれらの中に加えても差支えない。韓国の乳業メーカー最大手による牛乳に採用され、一般流通のほか学校給食向けでも販売展開されている市場実績がある。安全性に関しては米FDAがGRASとして許可。また1日当たり推奨摂取量は120~150㍉㌘、カルシウムと複合の場合は10~20㍉㌘に過ぎない。

 ならば骨と関節の両面から訴えれば良いのではないか──ここにきて蝶理ではそう考えるにようになっている。たしかにその両方に良いという素材はあまり聞いたことがない。一方、訴求点が複数になると焦点がぼやけるといわれるが、最近ではダブルヘルスクレームで差別化するトクホも出ている。現に米国では関節と同時に骨の健康を訴求する配合商品が販売されているではないか。

 ロコモティブシンドローム対応でまさに一石二鳥の素材。そんな新しい提案がこれから始まろうとしている。

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