機能性の実証 ヒト研究が必須に 機能性表示検討(2014.5.8)
健康食品など食品の機能性表示制度について検討している、消費者庁の「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」(松澤佑次座長・大阪大学名誉教授)は2日、機能性の科学的根拠レベルなど、機能性表示の根幹に関わる審議を本格的に行い、科学的根拠レベルについて、最終製品を用いたヒト試験またはヒト試験結果を中心とするレビューによって実証するとの消費者庁案を支持。新たな表示制度ではヒトによる機能性の検証が必須になることが確実となった。
ヒトによる機能性の検証は、同庁が3月に行った消費者意向調査でも、およそ7割が必要だと回答していた。
同庁が案で示した科学的根拠レベルは、最終製品を用いたヒト試験または適切な研究レビュー(システマティック・レビュー)による実証のいずれかを必須とした。最終製品によるヒト試験方法は特定保健用食品(トクホ)並みを求める。
一方、研究レビューによる実証でも、サプリメント形態の場合はヒト介入試験で肯定的な結果が得られていること、その他加工食品でもヒトの介入試験か観察研究で肯定的な結果が得られていることを挙げ、ヒト研究を必須とする。さらに、いずれの形態であっても「トータリティ・オブ・エビデンス」の観点を要れ、総合評価により肯定的な結果が得られている機能であることとした。
また、最終製品のヒト試験は研究計画の事前登録を行い、その結果はCONSORT声明などに準拠した形式で査読付きの論文により報告されたものに限るとしている。レビューによる実証の場合は事前登録は努力義務にする。
新制度における対象食品の範囲については食品全般としたが、アルコール飲料やナトリウム、糖分などを過剰に摂取させることになる食品は、一定の機能性があっても摂取による健康への悪影響が否定できないため対象外とした。
一方、対象成分は直接的または間接的に定量可能な成分とし、定量分析が可能であることを条件に挙げた。ただ、厚生労働省の食事摂取基準で摂取基準が策定されているビタミンやミネラルなどの成分は、栄養政策上の観点から栄養機能食品制度、トクホで取扱うこととにする。ただし、摂取基準があるn‐3系脂肪酸でもEPAやDHAなどの個別の脂肪酸には基準がないため新制度の対象になる。同様にビタミンAも前駆体のβ‐カロテンについては対象になる。
このほか、対象者は「生活習慣病等に“罹患する前の人”または“境界線上の人”」とし、特定保健用食品(トクホ)同様にする。ただし、成人に比べ判断能力が十分でない未成年者や、安全性に係る情報が十分でない妊産婦(妊娠計画中の者も含む)、授乳婦については対象としない。
機能性に関する情報開示については、容器包装への表示事項として①国による審査を受けていない旨の表示②未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者も含む)及び授乳婦を対象にしたものではない旨の表示③バランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言―の記載を必須とする。科学的根拠情報については詳細に情報開示を行うこととした。委員からはホームページのアドレスを容器包装に記載し、消費者がアクセスできるような配慮を求める意見もあった。
なお、関口洋一委員(健康食品産業協議会会長)は、次回(5月30日)の会合で健康食品業界としての考え方などについて意見を述べる機会を要求した。安全性や品質の確保、今回審議した機能性の評価方法など全般に及ぶ方策について提案するものとみられる。
次回は国の関与のあり方について審議が行われる予定で、新制度の参考となる米国制度で採用されている製品の登録制、また罰則規定などについて検討される可能性がある。