機能性の実証「議論必要」 規制改革会議・森下委員(2014.5.22)
規制改革会議委員の森下竜一・大阪大学医学部教授は11日、今月2日に開かれた消費者庁「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」で同庁が示した機能性表示に関する対応方針案について健康産業流通新聞の取材にコメントし、現時点では案の一部と閣議決定の間に齟齬の生じる恐れがあるとの認識を示した。コメント要旨は以下の通り。
まだ「案」の段階であり、今後、閣議決定にあった内容にまとめていくと理解している。
機能性表示の対象成分を「直接的または間接的に定量可能な成分」としたことは評価できる。複数の機能性成分が含まれる場合は複数の機能性成分の表示を可能とすることも、合理性があり評価したい。品質規格や製造基準に関しても安全性を考慮した内容になっており、妥当ではないか。
ただ、機能性に関して最終製品を用いたヒト試験による実証、もしくは適切な研究レビューによる実証を求めている点は議論が必要だろう。最終製品を用いたヒト試験に関しては特定保健用食品に準じる基準とされているが、消費者庁が審査しない前提を考えると意味がなく、査読付き雑誌への掲載で十分ではないか。新しく開発された機能性成分が様々な形態で市販されることを考えれば、最終製品でのエビデンスを求めるのは違和感がある。特に農業生産物の場合は最終製品での機能性の実証は不可能で、それも新制度の対象となっていることを考慮すると矛盾している。「ミニトクホ」のような制度を作るのは閣議決定された内容と合致しないことになり、懸念を抱いている。
適切な研究レビューによる実証に関しても、システマティック・レビューを企業責任で評価するとされているが、特に多くの商品が存在する機能性成分の評価を企業責任で行うというのでは、違った判断が色々出てくる可能性があり、逆に混乱するのではないか。
私も理事を務めている日本性成分のエビデンスに関するデータブックの編集作業を進めている。抗加齢学会に限らず、専門学会などの学術的団体がエビデンスを評価したものやレビューしたものを活用していくことも、科学的な実証性の担保や利益相反の回避を踏まえれば、消費者保護の観点からも望ましいのではないか。企業責任によるシステマティック・レビューだけでなく、学術団体などによる評価も取り入れ、消費者に安心感を与えるとともに、産業界が使いやすい制度にしてもらいたい。