部位表示ないと意味不明 消費者庁見解に業界揺れる(2014.6.12)
健康食品など食品の機能性表示制度を巡り、「医と食の境界は変わらない。食品で表示できる限界は特定保健用食品まで」との見解を消費者庁食品表示課長が示したことに、業界が揺れている。期待していた身体部位名を含む構造機能表示の実現に向けた雲行きがかなり怪しくなってきたからだ。
ある原料メーカーでは「薬事法が理由なのだから覆らないのだろう」と悲観的な見方。同社では事業への影響も出たという。「新表示制度を見据えて進んでいた複数の開発案件が止まってしまった」。
一方で、前向きな見方も。「(身体部位を表示できないならば)今までと何も変わらない」と大手企業のR&D担当者は指摘し、構造機能表示が「出来るようになる」と推測する。また、「閣議決定の内容に合わない」という意見は多く、消費者庁の見解は今後変わると見る先も少なくない。
消費者庁の新表示制度検討会に参画する業界代表委員も、どうにか覆そうという構えだ。
今月6日から8日、大阪で開催された日本抗加齢医学会総会の中で3日連続で催されたプログラム「機能性表示健康食品を考える/科学的根拠の評価に向けて」のパネルディスカッションで健康食品産業協議会の関口洋一会長は、「(身体に対する構造機能を表示できるかは)次回の検討会が大事になる。海外の(機能性表示の)書きぶりをまとめた資料を提出し、消費者から見て分かりやすい表現を議論したい」とコメント。
また、日本通信販売協会の宮島和美理事も「部位が言えないのでは(新表示制度をつくる)意味がない」とし、同総会内で別に行われた招聘講演の中では「具体的になにを言えるかが最大のポイントになる。機能性表示の範囲に関する消費者庁案は現在でも表示できる内容。構造機能表示が出来なければ、消費者の知る権利を侵害する」と問題提起した。
抗加齢学会総会の機能性表示に関するプログラムでは延べ36素材の機能性エビデンスなどについて業界24社が医師や業界関係者などに対してプレゼンテーションを行った。エビデンスに基づき考えられ得る構造機能表示も示した。例えばルテインならば「ブルーライトから眼を守るのを助けます」、シトルリンだと「血管の健康維持をサポートします」、グリシンは「睡眠の質を改善します」、ヒアルロン酸では「肌の保湿に有用です」などといった表示案が医師らに提案された。
身体部位を表示できないのだと仮にすれば、その機能性表示はまったく意味の分からないものになる。検討会後半になって初めて出してきた〝そもそも論〟を巡る同庁の見解は、消費者代表の委員からも反発を呼ぶ事態となっている。