24社が医師にプレゼン 機能性表示案も示す
~日本抗加齢医学会総会~
(2014.6.26)


 6月6日から8日の3日間、日本抗加齢医学会の第14回総会が大阪国際会議場で開催され、主催によると5500名以上が参加した。今回の総会長を務めたのは、規制改革会議委員でもある森下竜一・大阪大学大学院教授。総会長の肝いりで企画されたという、機能性表示を巡る3日連続のスペシャルプログラム「機能性表示健康食品を考える/科学的根拠の評価に向けて」では、健康食品市場に展開する24社が医療従事者や業界関係者に対し、31素材・36機能を紹介。エビデンスに基づき想定される機能性表示案も提案した。

評価の声と厳しい見方

 同プログラムは、抗加齢医学会と、業界8団体をまとめる健康食品産業協議会の共催。各素材のプレゼンテーションは歯科領域から男性医療・泌尿器領域まで、計10領域に分けて行われた。

 この10領域は、健康食品素材の機能性評価と表示に関して抗加齢医学会が独自に監修、取りまとめを行い、今年末までに公開しようとしている「機能性表示健康食品データブック」にも反映される見通し。ただ、抗加齢医学会内データブック作成委員会関係者によると、ここでプレゼンされた素材がデータブックにそのまま盛り込まれるわけではないという。

 3日間の発表で各領域の座長を務めたのは、データブックでも各領域の担当(作成委員)を務める予定の抗加齢医学会関係者が中心。各発表に対する座長の反応としては、「医薬品に近い試験で有意差が出ているのは評価される」などと好意的な見方があった一方で、機能性表示案に対し、「(エビデンスと比べると)違和感がある」や「もっとデータが必要」など、手厳しい指摘も出た。

 発表素材の選定は、抗加齢医学会が産業協議会の協力を得ながら主に行った。

 抗加齢医学会に近い関係者によると、白羽の矢を立てられても断った先が少なくなかったという。また、今年に入り情報や資料提供を呼びかけた段階で、様子見を決める先も多かったようだ。そのため、レスベラトロールが男性医療領域に組み込まれたり、取り上げられて然るべきと考えられる素材が見当たらなかったりと、バランスにやや欠けた感が拭えないものの、結果的に、ヒト臨床試験論文が多く存在するものから、そうではないものまで幅広く紹介されることになった。

どうなる「データブック」

 この3日間で提案された各素材の機能性表示案の一例は次の通り。

 ブルーライトのダメージから目を守るのを助けます(ルテイン)▽免疫機能を維持します(プロポリス)▽血管の健康をサポートします(シトルリン)▽脂肪燃焼を促進し、内臓脂肪の減少に役立ちます(カプシエイト)▽皮膚の保湿に役立ちます(グルコシルセラミド)▽更年期以降の女性の骨の健康に役立ちます(βクリプトキサンチン)▽関節のスムーズな働きをサポートします(ヒアルロン酸)▽排尿機能の維持に役立ちます(ボタンボウフウ)──。

 紹介された各素材の機能性は、おおよそのところヒト試験で得られたデータに基づくものだった。また、提案された機能性表示案は、米国など海外での実際の表示例を踏まえたものも多かった。一方で、試験系と、機能性表示案のかい離を座長から強く指摘された素材もあった。

 では、どのような試験系で、どの程度の効果が認められていれば医師は納得するのか。ひいては健康食品で機能性表示することが可能になるのか。消費者庁検討会が終盤を迎えても答えが見えてこないその疑問に、抗加齢医学会がまもなく本格的な制作作業に入ろうとしているデータブックが、新制度に直接関係しないものだとしても、一定の基準や指針を示すガイドライン的な内容になることが期待される。

機能性評価「ヒト試験が必要」

 機能性表示を巡る3日連続プログラムの中では、医師が、健康食品の機能性の評価に対する考え方を語る場面もあった。

 「健常人を相手にするのだから差が出るわけがなく、RCT(無作為化比較臨床試験)は馴染まない。薬ではないのだから、RCTは必須ではない」

 「機能性表示の容認に向けて」をテーマにしたオープニングパネルディスカッションの中でこう述べたのは、日本抗加齢医学会内に設置された機能性表示健康食品データブック委員会で委員長を務める荻原俊男・森之宮医療大学学長。食品の機能性を検証するヒト試験がRCTである必要性を問う会場からの質問に対してこう答えた。

 荻原学長は、元日本高血圧学会理事長で、高血圧治療ガイドラインの策定に委員長としてかかわったこともある人物。「健康食品は〝なんとなく効く〟というのがキーワード。そう言えるのに必要十分なデータ、エビデンスがあるならば(機能性を)表示していくべき。それが消費者に対する的確な情報だと考える」とも語った。

 また、ヒトに対する機能性と安全性が確認されていればそれで良いとの見解を示したのは、抗加齢医学会前理事長で、現在、姉妹組織の日本抗加齢協会理事長を務める吉川敏一・京都府立医科大学学長だ。

 吉川学長は、「機能性表示の今後の方向性」と題したクロージングパネルディスカッションに参加し、抗加齢医学会が監修し、抗加齢協会が医師や業界、消費者などに提供していく予定の機能性健康食品データブックの方向性について解説。その中で「医師が監修することを踏まえれば、ヒトに作用することが必要。安全性も必須」だと述べ、データブックに盛り込まれる素材や成分は、ヒト介入試験(ヒト臨床試験)や疫学調査が行われているものが優先されるとの考えを示した。

 その一方で、「食品には消化管センサーへの作用がある」とした上で、有効成分などが「吸収されようが、されまいが関係ない」とも語った。

 「現在のサイエンスでは腸内細菌の作用が非常に重要であることが分かってきた。ポリフェノールなど吸収率がわずかでも効果のあるものは沢山ある。それは恐らく消化管の中の反応」と吉川学長。そのため「(食品の)ヒトへの効果は試験管内の実験や理論で云々できないというのが前提。それが覆されてしまうと、間違ったデータが消費者のもとに届くことになる」と述べた。

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