素材開発に意欲高まるー受託事業者アンケートー(2013.7.25)


 本紙は、全国の健康食品受託製造事業者を対象に、生産量が多かった素材や下半期に期待する素材、差別化や課題などについてアンケートを実施した。また、業界が最も注目している健康食品の機能性表示制度への期待も聞いた。定番商材が引き続き稼ぎ頭となる一方、円安を背景に原材料高や電気料金値上げへの懸念が高まりつつある。機能性表示は半数以上が期待を示したが、どのような制度設計がなされるのか現状では定かでなく、不安の声も混じる。以下に詳細をまとめた。

定番素材が安定

 受託事業者へのアンケート調査は毎年2回(7月、12月)実施しており、今回の調査では44社から回答を得た。

 今年上半期に生産が多かった素材(複数回答)では、「青汁(大麦若葉、クマザサ含む)」(14社)「コラーゲン」(同)「グルコサミン」(同)の3商材をトップに、「プラセンタ」(12社)、「コンドロイチン」(5社)「酵素(植物発酵エキス)」(4社)と、定番素材が上位を占めた。昨年来上位に顔を出している「酵素(植物発酵エキス)」については、「まだ1年くらいは人気が続く」(中堅受託)との回答も寄せられ、このまま人気定着化につながるかが注目される。

 一方、今年下半期に期待される素材は各社の回答がかなり割れ、ヒット素材不在が如実に現れた。上位は「プラセンタ」(8社)「青汁(大麦若葉、クマザサ含む)」(7社)「酵素(植物発酵エキス)」(7社)「乳酸菌」(5社)といった定番素材がランクイン。ただ、これらに続いたのが「プロテイン」(3社)「コラーゲン」(同)「ショウガ(黒ショウガ含む)」(同)「生コーヒー豆(クロロゲン酸)」(同)で、特に生コーヒー豆は、花王の「ヘルシアコーヒー」の発売をきっかけに市場拡大に期待が高まっているといえそうだ。コーヒーという知名度の高さも期待につながっているとみられる。プロテインは大手乳業やスポーツサプリメーカーの商品が定番だが、置き換えダイエットやロコモティブシンドロームなどのニーズに期待感が高まっている可能性がある。

原材料高に懸念も

 一方、他社との差別化として特に力を入れている点(複数回答)は「品質管理(GMP含む)・安全性確保」(27社)「商品の企画開発・提案」(19社)「小ロット対応」(15社)「自社素材開発・提案」(12社)の回答が多かった。上位の回答は毎回ほぼ変わらないが、今回は「自社素材の開発・提案」の回答がやや目立ったほか、少数ながら「研究開発・エビデンス」(3社)との回答もあり、素材開発に再度力を入れる動きが出てきたとみられる。

 一方、「喫緊の経営課題」(複数回答)では、毎回回答が多い「新規獲得」(19社)の次に「原材料高」(15社)が入った。今年に入り為替が1㌦=80円台から100円台へと大幅に円安が進行したことや、電気料金の値上げの影響を受けたものとみられる。回答の中には「コスト転嫁ができない」との悲鳴に似た声も聞かれるなど、業績圧迫要因となっているようだ。ただ、安倍政権はデフレ脱却に重点を置く姿勢を見せているだけに、為替面で原材料高が抑えられる可能性は低い。回答の中には「低価格劣化品による価格低下」を挙げた企業もおり、厳しい競合状態のなか、原材料高を転嫁できずに自社で吸収せざるを得ない厳しい経営環境から、当面脱却できない可能性も予想される。

機能性表示を歓迎

 政府の成長戦略(日本再興戦略)に、健康食品の機能性表示を可能にする仕組みの整備が盛り込まれた。米国のダイエタリーサプリメント制度を参考に、安全性なども考慮した制度検討を求めており、来年度にも開始される。受託事業者にとって機能性表示制度への期待を聞いたところ、およそ6割の25社が「期待する」と回答、「期待しない」は約1割の5社にとどまり、期待が大きく先行する結果となった。業界悲願であるだけに「差別化できる商品提供が可能になる」や「市場拡大に期待できる」との声はもちろん、「ニーズに的確に訴えられる」「消費者への情報提供」など、消費者を意識した回答も目立った。

 ただし、まだ制度検討が始まっていないこともあり、「明確な指標が出ていない」や「どこで表示の線引きをするのか」といった制度に対する懸念や、「別の規制がかかる」「悪徳業者が得をする」といった警戒意識もあった。規制はともかく、悪徳業者がのさばるのは本意ではなく、企業モラルを高める努力や業界全体で自浄努力が発揮できるよう、今から業界で議論することも必要だ。

Clip to Evernote

ページトップ