爪にも栄養 必要な時代に  (2013.7.11)


 爪の美容・健康を内側から整えようという美容サプリメントが出てきた。若い女性を中心にジェルネイルなどで爪を美しく見せることは一般化している一方で、負荷を与えすぎれば爪トラブルにつながる懸念も。爪のおしゃれを末永く楽しむためにも、美しく、かつ健康な自前の爪を保っておくべきではないか。それに資する栄養や機能を提供できるのがネイルケアサプリ。「需要はある」──ネイル業界関係者からはこうした意見も聞かれる。

ネイル業界、「需要ある」の声

 爪の美容・健康維持を訴求するネイルケアサプリメントが登場したのは12年冬のこと。

 まず、健康食品企画開発・製造販売のオルトが「爪にも栄養が必要」だとして爪の主成分ケラチンを作るために必要な栄養素を配合した「ネイリストサプリ」をネイルサロン向けに発売開始。次いで今年2月には、爪の構成成分・美容成分・サポート成分を配合し、3つのアプローチで「先まで強く、美しく!」と訴える「ネイリッチ」をDHCが新発売した。

 それぞれの配合素材を見ると、ビオチンとポリアミンは両品に共通。一方、「ネイリッチ」では爪の構成成分としてポリアミンのほかケラチン、シスチン、MSMなど、同じく美容成分としてコラーゲン、N‐アセチルグルコサミン、同じくサポート成分としてビオチンなどビタミン・ミネラルを配合している。

 オルトでは、「健康で美しい爪には栄養が必要であることを普及する」ためとして「ネイル栄養学」と名付けた勉強会を積極的に開きながら、ネイルサロン向けの拡販を展開中。ネイルサロン卸大手を通じて販売しており、当初はネイルラボのみ1社だった卸先は現在、ネイルパートナー、TAT(ティーエーティー)も加わり計3社にまで拡大した。

 「現在の取扱店舗数は恐らく300前後。卸先が増えたことで、今後さらに広がると思う。とはいえ全国のネイルサロンの数を考えれば、まだまだこれから」とオルトでは話す。

 こうしたサプリが登場した背景には、美容の一貫として爪のおしゃれを楽しむネイルアートがかなり浸透したことがありそうだ。

 「ネイルが一般化したのはここ10年ぐらいのこと。高い技術を要したスカルプチュアに代わり、ジェルネイルが普及したことが大きい」。ネイルの普及とネイリストの技能向上を目的に85年に設立されたNPO日本ネイリスト協会ではネイルアートが普及した理由についてこう話す。

 ジェルネイルとは、ゲル状樹脂をUVライトで硬化させる付け爪の一種。機器や材料が手ごろな価格で市販されていることもあり、若年層女性を中心に自宅で行う人も多いとされる。また、施術のしやすさなどからネイルサロンにおいてはサービスの中核を成すメニューの一つ。同協会の調べによれば、ネイルサービス市場のサービス別販売実績について、ジェルネイルが占める割合は11年に7割を突破した。金額ベースで見ても、既に1000億円市場を超えており、12年は1135億円を見込むという。

 一方で、ジェルを取る(オフする)にはアセトンなど薬剤を使う。また自宅でジェルネイルする人の中には、無理やりオフする人もいるとされる。このため、オルトによると、「ネイルサロンに行かずジェルネイルを繰り返し行う人の中には、爪がボロボロになっている人も見受けられる。ほかにも、ジェルの影響かどうかは分からないが、爪に悩みを抱える女性は意外に多い」という。

意外? 爪は重要な器官

 爪は、皮膚表皮の角質が硬化して出来た皮膚の付属器官と考えられている。主成分は、毛髪の主成分として知られるタンパク質の一種、ケラチンで、そのほか、水分、ごく少量の脂質などが含まれている。

 その役割としては、ものを掻いたり、剥がしたりはもとより、指先を保護するという重要な機能もある。これにより、指先で細かな作業をしたり、ものを掴んだりできるほか、硬い爪が支えとなることでうまく歩けるなど、爪は、ヒトや動物が生きていくにおいて重要な役割を担う器官といわれる。

 その一方で、「爪に関してはこれまで栄養学がなかった」とオルト。爪の異常に関しては栄養障害が老化により現れるものもあるが、それに対してどのような栄養素が必要かは知られていないという。

 爪の異常としては、水分不足で起こるとされる二枚爪はじめ、爪が薄い(卵殻爪)、横・縦の線が出る(スジ爪)、黄色くなる(黄色爪症候群)など多々あり、それにより爪が割れたり、剥がれやすくなったりする場合もあるとされる。

 こうした異常を栄養成分や機能性食品素材で予防・改善することで、美しく、かつ健康な爪を維持しようというネイルケアサプリメント。業界からは「ニッチ過ぎる」などという声も聞かれる一方で、「エールを送ります。需要もある程度あるように思います。ジェルネイルも、どうしてもツメをいじめているわけですから。ネイルする人も今後さらに増えるはずです」──日本ネイリスト協会の藤原洋二・副理事長兼専務理事はこう話している。

 日本ネイリスト協会がまとめた「ネイル白書2012-13」によると、国内ネイル産業は年々拡大しており、2011年の売上高は実績ベースで2085億円、12年は2165億円を見込む。また、同産業を牽引しているのは、ネイルサロンなどが提供するネイルケアやネイル用品の販売をはじめとするネイルサービス市場で、12年の市場規模は1585億円の見通し。さらに、ネイルサービスを提供する施設も依然増加傾向にあり、施設総数は11年で約2万店舗にまで拡大した。施設について近年の傾向としては、専業のネイルサロン以外にもヘアサロン、エステティックサロン、フィットネス施設などがネイルサービスを取り入れている。特に、中高年層の取り込みに期待できる業態との期待から、化粧品専門店がネイルサービスを提供するケースも増えているという。

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